彦根市図書館整備基本計画改訂(素案)についてパブリックコメントが募集されています。

2023年2月4日土曜日

SDGs その他 意見には個人差があります 街づくり

  おかげ様でM1の入居について、進展があり、今週先方に図面をお渡しし、内装について近々調整をし、契約をし、工事に入るという運びになっております。入居事業者様については先方の了承をとって、改めてご紹介させていただきます。

 


 私はたぶん、日本の人口の1%に入るくらいの図書館フリークです。持ってる図書館カードは7枚、気になったベストセラーの大半を図書館で調達し、年間の貸し出し件数はCDも含めると軽く200点は超えます。

 気になった本は即ネットで貸し出し予約、5自治体、常時80冊くらいの予約枠が埋まっています。ここまですると読みたい本がすぐ読めるし、それによる知的、経済的な恩恵は相当なもの。ビバ東京!

 子どものころ、近隣の金亀町の図書館が閉館して、彦根の図書館はぱたりと利用しなくなり、現在の尾末町に移転してから足が遠のいて何十年、今思えば惜しいことです。実際、今のような利用の仕方を覚えたのは就職してだいぶたってからですが。


 彦根市に今、図書館問題が勃発しているようなのです。

 彦根の将来にかかわる問題なので、ざっくりここでまとめて問題提起をしたいなと思います。


まず、彦根市の図書館問題は先の大久保貴前市長の公約にさかのぼります。

 2016年の選挙で大久保前市長は、「彦根市立病院の医師不足や空きベッドへの対応、新しい図書館の整備、小学校の空調設備」などを公約に掲げて出馬し当選しました。ところが、在任中大久保市長はほとんど図書館問題に向き合わず任期間際になって、次期公約として改めて掲げて昨春落選しました。その後、どういう経過があったかまでは私は承知しておりませんが、いろいろなすったもんだ(?)を経て、ただいま彦根市のホームページで

彦根市図書館整備基本計画改訂(素案)について 

というパブリックコメントが募集されています。(~2月7日まで。短い!(゜-゜)) 

 私はパブリックコメントという制度自体、アリバイ作りの大嘘制度だと認識しておりますが、この募集もわずか1か月。

 たまたまこのページをご覧になった方に今頃言われても、ということになりそうですが、それでも後からでも関心を持ち続けていただくために、敢えてどういう議論がこれから彦根市で行われる可能性があるかを書いていきます。

 (そもそも皆さん、政治的無関心で、知らなかったでしょ?こんな話題)

 

 パブコメの資料によると、彦根市の図書館行政は”平成 22 (2010 )3 月に彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町および多賀町の 1 4 町による「湖東定住自立圏共生ビジョン」が策定され、拠点図書館の整備と圏域内図書館の連携に取り組むことにな”っております。


 つまり5つの地方自治体が協力して、市民サービスの向上に努めるということです。さて、基本計画に添えられた以下の資料をご覧いただきたい。

  市民一人当たりの資料費が彦根市はたった229円(令和4年、県下ワースト2位)、一方、愛荘町(1420円)・豊郷町(883円)・甲良町(1366円)・多賀町(983円)。

 ちょっと目をむく文化格差ですね。財政が厳しいのだからしょうがないじゃないかという人がいるかもしれないけれど、文化や教育は市民の成熟に直結します。東京で図書館三昧の知的生活を送ってる私からすればこんな町帰りたくないですね。

 

 まあ、100歩譲って、大人は「経済活性化のために本は買え」と言われるかもしれない。 県出身のベストセラー作家今村祥吾さんも、図書館がベストセラーの本を何十冊も置いているのは作家の知的財産権を過度に犯しているのではないか、というようなことをおっしゃるのは私からすれば耳が痛いけれども、経済的に誰もが自由に本を買えるわけではないのです。まして、未成年が自由に公共の知識財にアクセスできないとしたら、彦根市の人材の「生産性」にも大きく影響がある話ではないですか?

 ちなみに「都道府県別全国学力テスト正答率」上位の県の図書館事情を調べていたら、このような資料を発見。

日本一の読書県を目指して  県内図書館の取り組み。

 知力が国力ならぬ「県力」と直結することをリアルに考えれば、秋田県(学力テスト全国2位)の「一日30分以上の読書をする県民が7割」という取り組みもうなづけるところではあります。

 

 さて、振り返って彦根市の今回の「図書館整備基本計画」で周辺自治体と同じレベルまで市民サービスを上げてくれるのかと思ったらとんでもない。この案は改善ではなく改悪であること疑われています。 

 以下問題点を列挙します。

 

①県下で実績を上げている図書館の館長は司書の資格を持つ専門家であるのに対して、彦根市では短期で職を代わる行政職が館長についている。また、図書館行政を司る図書館協議委員長や教育関連の当て職で赴任しておられる方が多く、 長期的ビジョンが臨めず職員との連携もうまく行っているように見えない。

 

②「彦根燦ぱれす」跡地に「中部館」を開館するというプランは燦ぱれすの建物容量から考えて中央図書館の蔵書の一部しか蔵書できず、結果として非効率な施設になる可能性が高い。きちんと予算を付けて、市民の知的興味に応えられ、なおかつ市民生活の拠点になるような彦根市図書館を新設してほしい。

 

稲枝分館も「サービスステーション」に格下げとなり、十分な市民サービスが期待できない。

 

そしてこれが一番問題なのですが

④ 資料に「指定管理制度の導入も可能とする」旨の文言が入っていて、仮に導入された場合、本来の図書サービスから隔絶した、ますますのサービス劣化の可能性を否定できない。

とのこと。

 「指定管理制度」という文言は入っていませんが、26ページにこのような記述があります。

図書館の管理運営においては、持続的に安定した図書館サービスを維持するため、優れたスキルを持った司書の確保がより重要となりますが、年々その確保が難しくなっています。複数館体制となった場合、管理運営経費が増大するため、事務の一元化や業務の効率化、省力化を図るとともに、望ましい管理運営方式の検討を進めることとします

 一見、合理的なことを言ってるふりなのですけど、この改定案と同時に市議会の病院・福祉教育委員会から「図書館の指定管理制度」について検討するように提言が出ることになっているそうです。(以上、彦根親子劇場/基地文庫配布の資料による)

 さて、ここで出てきた「指定管理制度」とは何か。それは海老名市や武雄市で導入されたいわば「公共サービスの切り売り民営化」にほかなりません。

 いくつかの記事をリンクしますが、わかりやすいのはこの部分でしょうね。

 市立図書館を巡っては14年度に指定管理者制度を初導入。15年に刷新した中央図書館は年中無休で書店やカフェを併設、イベントにも力を入れ、利用を伸ばした。全国2カ所目の「ツタヤ図書館」と注目を集める一方、海外の風俗店を紹介する旅行ガイドなど「不適切図書」の混入などのトラブルも相次ぎ、館運営の方向性の違いから一時はTRCがCCCとの協力関係を解消する方向で検討に入るなどした経緯もあった。(神奈川新聞

 ・目黒区議員かいでん和弘による「図書館どうする問題」

「ツタヤ図書館」問題で浮上する「司書」の重要性

内部文書を徹底検証ーー疑惑の“ツタヤ図書館“が新たに選定された和歌山でも裏で画策…?

(週プレ)

 ちょっとググっただけで、怪しい記事がバンバン出てくる。借りたい本がほとんど蔵書されてないとか、職員と書店員の区別がつかないとか、見てくればかりの「見せ本」で、人気の本を検索しても、蔵書がない、もしくは借りられる本がなく、販売のほうに誘導されるなどなど、問題噴出のこの手法を、周回遅れで彦根市でやろうってのは、はっきり言うけどTSUTAYA(CCC)から裏で「接待」されてますか?そこの推進派の議員さんたち。

 本気でやろうとしてるなら頭が悪すぎる。一時は施設の外観の派手さから話題にはなりましたが、それは図書館の存在意義と真反対、極北のハコもの行政だと私は思いますが、違いますでしょうか。

 図書館というのは市民が誰でも、必要な時に、必要な知的財産に無料でアクセスできる「コモン(共通財)」の集積所であるべきです。

 例えば、今この記事を書くのにネットで資料を拾っていますが、それがすべて有料ならばこんな文章書けません。でも、例えば高校生が興味を持った作家のほかの作品を読みたいとき、或いは大学生が論文の基礎資料として大学図書館にない書籍を探すとき、さらには子育て中のお母さん/お父さんが自分の子供にできるだけたくさんの絵本や児童書に触れさせたいと思った時に、それ全部買え!って言うなら、金持ち以外、知識人も文化人も育ちませんよ。

 愚民化政策ですか?(国が率先してやってますけど)

 

 明後日締め切りのパブコメにどれだけの人が反対表明してくださるか、わかりませんが、興味を持たれた方、疑問を感じた方は、以下のアドレスにアクセスの上、 意見を表明していただきたいと思います。

 仮に締め切られた後でも、「議会を監視」することで阻止や方向性の変更をすることは可能です。滋賀県も彦根市も4月に統一地方選挙ありますよね。ごり押しするなら覚悟していただかないと。

 以上、関係各位は問題意識をもって、心ある方はリンクへGO!

彦根市図書館整備基本計画改訂(素案)について  

(~2月7日まで)  


 追記) 斎藤幸平さんの近作『ゼロからの「資本論」』に図書館に関する記述がありますので、引用しておきます。ご一読を。

(この本ももちろん、図書館で借りました)

  今、全国の公立図書館で非常勤の職員が増えています。ほとんどの都道府県で図書館で働く人の半数以上が非常勤。長野県でほぼ8割を非常勤職員が占めています。(注:滋賀県は全国42位 54・9% 2018年)非常勤職員を増やしているのは図書館運営の「効率化」と「コスト削減」のためです。図書館が儲けることは不可能です。人件費をカットするしかありません。しわ寄せは労働者に行くわけです。最近でも手取り9万8000円で働く地方公立図書館の20代女性非正規職員によるネット上での悲痛な訴えがSNSで大きな反響を呼びました。
 今、非常勤職員として、低賃金であるにも関わらず図書館で働き続けている方々は、本が大好きです。その使命感から割に合わない素晴らしい仕事をしてくれています。だからといってそれに甘えていていいのでしょうか。
 こんな状況が続けば図書館で働きたいという人がだんだん減っていきサービスの質も低下してしまうでしょう。その結果、貴重な資料が適切に保管されなかったり、利用者の求める資料を照会、検索して情報を提供するレファレンスと精度が保てなかったりするというようなことも起こりかねません。
 公立図書館という場やその蔵書は、まさに社会の「富」、大事な<コモン>です。知識や文化というものは誰もがアクセスできてこそ伝承され発展していきます。しかし「商品」ではないので儲けは生みません。「使用価値」より「価値」を優先する資本主義の論理によって図書館運営が”改革”されれば、社会の富が痩せ細ってしまうのです。
 「富」を削って「商品」を増やそうとする動きは他にもあります。例えば国立競技場の建設に合わせて条例による規制が緩和された神宮外苑の再開発は大きな社会問題になりました。明治神宮が持っている土地には樹齢100年を超える木もあります。その木を1000本近く伐採して、商業施設を建設しようというのです。
(49ページ)

23年3月2日 朝日新聞

 

追記)あまりに衝撃的だったのでデータとして追加しておきます。

中学校の図書室の標準達成率滋賀県全国で最低です。こんなひどい県に今私たちは住んでいます! ⇒https://twitter.com/iokawauchi/status/1659517462432595968