GWにnonoHana南彦根の企画段階で巡った都内の倉庫リノベーション物件がどうなっているか、現状も含めいくつか改めて見学に行ってきました。
nonoHana南彦根の企画、というか、これからどうするのかという「思案」は2020年の夏に始まりました。最初に縁あってお付き合いがあった県外のプランナーさんの提案がどうにも現実的ではなく、これはマジでやばい!と、結局ほかの案を求めて正月に草津に出向き、今も大変お世話になっているデザートレインのHさんと出会いました。現在のnonoHanaのレイアウトは、Hさんに初めて彦根においでいただいたときにいただいた案が基本になっています。
それとは別に、やっぱり倉庫をリノベーションして商業物件として再生させるのがどこまで現実的に可能なのか、悩みがありました。それなりに社運をかけてますので、できてすごいしょぼかったらまずいし、耐久的にどうかという問題もありました。またおしゃれで現実的に使い勝手のいいモノを作りたいとも。
となると先行の現物を見なければわからないと思い、2021年の3月に東京から日帰り圏内の倉庫リノベーション物件をいくつか見学に行きました。
最初に訪問した物件がここというわけではないのですが、もっとも感動し、弊社のリノベーションの力になった物件、それがこの、2019年3月にオープンした『AKOMEYA TOKYO in la kagū』です。
それが、外壁を大きく切り取りサッシを嵌め、周辺に緑を配置し、建物前面の敷地に、うねるようなピアノの鍵盤を思わせる木製の階段をつけ、ただの倉庫を「異形の建物」に仕立て上げた、その「価値の創造」と言ってもいい仕上がりに驚嘆しました。
ここはもともとは、隣接する新潮社本社の倉庫だったそうです。今も隣地にはタイル張りの古い倉庫(こちらの方がエメラルドのタイル張りで実はかっこいい)があり、その隣に社屋があります。となると、正面の階段のあった場所は当然ながらもともとは搬出用の駐車場があったと推察されます。
そこをすべて緩やかな階段にしてしまう贅沢な土地の使い方。誰がこんなこと考えたの?とまじめに調べたら、なんと、先の東京五輪の国立競技場の設計者でもある隈研吾氏の設計によるものだということが判明しました。さすがの仕上がり。
■123.お米の聖地「AKOMEYA TOKYO in la kagū」
ただ、私がすごいと思ったのは隈氏ではなく、実は新潮社の方です。これ、どう考えても新築で鉄筋の商業ビルを建てる方が工費が安いし、収益も望めるんですよね。飯田橋駅から徒歩10分圏内ですから、タワマン建てたら即完売する立地です。土地担保だけで上物の建築費が悠々でるような好立地。
そこを、しかも、波板スレートの倉庫をリノベーションして商業物件にしようと考えた経営判断に感服しました。私、新潮社嫌いなんだけど(版権預けてる作家には好きな人も多いけど)、この英断だけで好感度が3割くらいアップしました。
さて中に入りましょう。(内部イラストはこちらの記事からお借りしてます)AKOMEYA とはa KOMEYA ただの米屋じゃないよ、特別な米屋だよ!という意味で命名された都内に十数店舗を持つライフスタイルショップです。まず1階、左手に大きな階段がありますから、その下に屋外飲食スペースを設けています。右手の大木は桜!春にはランチで花見を楽しめます。
中に入ると右には「ごはんのお供」を主としたこだわりの食品セレクトショップが、左にはオリジナルの主に豚カツを提供するAKOMEYA食堂が、さらに奥左手にはたぶん創業家業のお米屋さんがあります。
全般的にデパ地下並みの価格帯ですが、神楽坂は料亭がひしめく花街ですから重宝されていると思います。
私の興味は天井の仕上げがどうなっているか、エアコンは?照明レールは?排気口は?という構造上の問題点でしたが、建物の味を生かして、趣があって素敵でした。
基本、地の鉄骨やスチールの階段を生かしつつ、そこに銀色の配管ダクトを這わせる。それがむしろ照明を反射して美しい。剝き出しの天井は温かみを出すため竹で格子が組まれ、壁面や設備天井面は慶事の朱赤(べんがら)、建物の奥には巨大なしめ縄がありその左手に2階へ上がる階段があります。
階段も元々の搬入用のリフトか昇降機がついていたようですが、それも地のかたちを生かしつつきれいに白で塗装され、踊り場には施設ロゴ、暖色の照明が落ち着きを与えています。
2階はアクセサリーや服飾、お茶や陶磁器などの生活雑貨が並びます。天井が本当に剥き出しで、正直冷暖房効率が悪いだろうなとは思いました。
一応聞いてみましたら、夏めちゃくちゃ暑いとか、冬激さむ!とかいうことはないそうです。天井には大きなサーキュレーターが設置してあり、季節によっては回っています。
ただ、やはり大変そうなのは光熱費。背面に回ると巨大なキュービクルとエアコンの室外機がずらり並んでいましたが、これはやむを得ないことかと思います。
(条例ができたとはいえ、都内で太陽光発電を備えたビルや建物はごくわずかです。これは都市部での集合住宅の供給と配電のルールが一般化されてないためかと私は思います)
弊社、nonoHanaの共用通路、AKOMEYAに感動した私自身の当初の希望は天井を張らずに剥き出しで倉庫感を残したものを、というオーダーだったのですが、結局ルーバー的なものを張らざるを得ないこと、 通路とは言え真夏に室温が上がる可能性があること、汎用の天井ボードを張った方が工費が安くつくことで、現在の仕様となりました。当然のことながらボードを張った方が後の管理はしやすい。難しいものです。
2階店舗を見た後はそのまま表に出て、大階段を、宝塚のトップスターのような気持ちで下りて、la KAGUの旅は終わります。
もう少し近ければここで桜を見ながら豚カツ食いたいと私はいつも思う。倉庫リノベーションのお手本として、全国全物件でやはりここが抜きんでているので最初にご紹介させていただきました。
記事末にその他の画像を掲載します。倉庫リノベーションをお考えの方で、東京にいらっしゃった折にはぜひとも足を運んでいただきたい素晴らしい建築です。
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