5月にJR西日本が大幅な赤字を発表。ついで、先週「JR東日本 35路線66区間赤字」というニュースが出ました。
裏を読めば今のままではローカル線は廃止する可能性がありますよと、いう脅しめいた観測気球だと思うのだけれど、ちょうど、7月29日のモーニングフラッグ(東京MX)で、近江鉄道を救済するための「交通税」の導入について、丁寧に取り上げていましたので、地元のことでもあるし、記録として概要を紹介したいと思います。
キャスター:堀潤 コメンテーター:阿部将貴・谷口歩実・池田颯 アシスタント:田中陽南
なお、モーニングフラッグは放送外地域に向けてネットで無料放送しています。1週間以内で見逃しもあります。 以下、番組内容を発言者別にまとめました。
【滋賀県が導入を検討している「交通税」の仕組み】
コロナ禍前から28年連続赤字の近江鉄道を救済するため、滋賀県議会でその維持費を税金で賄うための「交通税」の導入が議論されている。予算規模は年3億円以上で、県民税・固定資産税への上乗せが検討されているが、そもそも県南の人は乗車機会がないので不公平ではないかという議論もある。
【コメンテーター・キャスターの意見】
■阿部将貴 :
・地方だとバスや車のほうが早いので、廃線の流れはやむを得ない。鉄道というインフラは古いのではないか。ただ鉄道ファンの希望として、近江鉄道は残してほしい。
・近江鉄道も電車を廃止して、線路を道路にしてBRTというバスを走らせる案も検討されたがそちらの方が赤字になる。近江鉄道は路線によっては乗客数が多いが、トータルで赤字なので難しい。
■谷口歩実:
・公共交通機関は、例えば運転ができなくなった高齢者など脆弱な方や通学の学生が使うもので、街づくりのビジョンを示した増税なら仕方ないと思う。税金とられてるなら使おうという人もいるかもしれない。
■池田颯:
・税金はもともと再分配機能があるものなので、使い道としては間違っていないがやり続けると、ただなくなっていくだけのものなので、議論は大切。
■堀潤:
・お金に色は付いていないので、税は消費税のように「福祉目的税」で導入されても、その通りに使われないことも多い。国税で徴収するのか、地方税で徴収するのか、今後、税金の高い安いで住む場所を決める時代になるかもしれない。
一人当たりの負担額で言えば、鉄道が廃止されるような地域は上下水道をはじめ、いろんなインフラをどれくらい負担して暮らしていくのかということになるので、トータルで税の導入が必要になってくるのではないか。
・ 十勝の上士幌町ではかつての鉄道があったが今はない。無人バス(自動運転)を走らせる実証実験をしている。
【”1000人未満”ローカル線存続に向けた様々な動き】
国主導で協議会を設置し、利用促進策やバスへの転換の可否などについて検討。
富山市のケース:
2006年廃線のJR富山港線⇒LRT,次世代型路面電車にして増便。新駅を4つつくったこともあり、1日当たりの利用者は2・2倍に増加。
野村総研の振興策のアドバイス
①公的資金を入れて利便性を高める
②自動運転への切り替えでコスト見直し
③駅前に学校を作るなど、鉄道が使われるような街づくり
【コメンテーター・キャスターの意見】
■池田颯:
・コンパクトシティなのか、今のままお金を入れるかの2択じゃなくて、第3の選択を考えたい。現状のテクノロジーで赤字になってしまうにせよ、今は認可されていない自動運転の車を通らせる場所を作るとか、特区にして実証実験をするのはどうか。
・少子高齢化は必ず進む。それは人口統計で分かり切ったこと。近江鉄道については、そこを政治家が票には結びつかないだろうが、将来的な高校の統廃合含め、政治家が15年後を見据えた政策をして責任をとる動きをしていかないといけない。
■谷口歩実:
「電車はその地域の人だけが担わなければいけないものなのか。」(田中陽南)
⇒全国からクラウドファンディングやふるさと納税を活用してもいいのでは。
・税金を投入するなら、それをベースに地域を作っていく。例えば都営の交通機関は障害者手帳を持ってる方は無料で利用できる。そういう公共政策も含めた鉄道というものを考えなければいけない と思う。
・高齢者施設と高校を一緒にしてしまうのはどうか。
■阿部将貴 :
・滋賀県の場合はバスにしたところで運転手を確保できない。複合的な背景が絡み合って、ローカル線をどうするかという問題を難しくしている。
・富山の例は、新幹線を通すために今までの路線を高架にしないと鉄道を維持できないための転換で、路面電車が解決策になるわけではない。
・誰が使うのかを考えて立案する。近江鉄道の場合は高校生。それを最優先で考える。僕は税金を使って動かしていいと思うが 、いつまでも投入し続けるのがよいと思わないので、10-15年程度の期限を切り、その後は高校の存廃、移動、統合も含め、検討すべき。人口が減っていく以上やむを得ない。
・自動運転の特区にするとかいいアイデアだと思う。
■堀潤:
・利用者の行動変容が求められるかもしれない。通院に必要なら、薬はドローンで運び、診察はオンラインでやれば必要性は緩和できるのでは?
・自動運転を追求せざるを得なくなった背景は、タクシーの運転手ですら確保できないという人手不足の現状がある。動かし手がいない。
以上
さて、近江鉄道は私自身は生まれて2回くらいしか乗ったことがないので、子供のころ「日本一高い」と友達間で噂されていたことと、高校の行き帰りに線路下をくぐったくらいの思い入れしかないのですけど、私の中の、真逆の意見を2つ並べておきます。
①期限を切って廃線して、地域の交通インフラは代替を探せ。
カルト支配された自民党政権の無為無策の30年の結果として、日本の少子高齢化は避けがたいと考えています。
となると、交通はもとより、上下水道、電力、ガス、通信、いずれもが末端から途絶えていく可能性がある。だって1万人規模で作ったインフラを3000人で回そうとしたらいずれ無理が来ます。これは水道事業の民営化なんかでは対応できない。
ならば、地域によっては井戸の掘削補助を出し末端を水道供給網から外す。電気は太陽光、通信は衛星、ガスはプロパンか薪で対応できるよう、行政が10年程度かけてサポートしていくしかないと思います。そんな!と思うかも知れないけれど、大丈夫です。モンゴルの遊牧民だって今や、ソーラーと風力で電気を賄い、スマホを使っている時代ですから。
ただ、その不都合を選挙の票欲しさで政治家は口に出さないんですよね。となれば、全国の無能な政治家が巣食っている地域順で破綻していくしかないように思います。
そうならないための議論、或いはソフトランディングの議論を真摯にしてほしいですね。
②税金を投入し再公営化、「国鉄」を復活。
元資料に当たっていないので、ほかの論者の受け売りですが、国鉄の民営化は失敗だったと思います。分割した結果、何が起こったか。東海道新幹線を持つJR東海だけが儲かって、地方のJRの大部分が赤字という地方いじめのような状況が現出しています。
先ごろ亡くなったJR東海の名誉会長 葛西敬之氏のような政界にも密着したフィクサーがなぜ生まれたか。それはJR東海だけが儲かる仕組みを自民党と一体になって作り上げたからです。挙句の果てに第2新幹線とか寝ぼけるのもいい加減にしてと言いたい。
結局自然破壊の末、大赤字が約束された「第2新幹線」も税金で尻拭いしてもらうつもりなのでしょう。こんなことに金を使うくらいなら、新幹線で儲かった利益を地方の赤字ローカル線の維持に回した方がまだいい。
道路が国営のインフラなら、 鉄道だって同じくらいの価値があると思います。今、戦況に立たされているウクライナで比較的スムースに避難が進んだのも鉄道あってのことと言います。イギリスはコロナ禍を経て、鉄道の再公営化に向かっています。
■コロナ禍を経て「再国営化」に向かう英鉄道の事情(東洋経済)
金儲けにひた走る日本ではそういう議論が俎上にさえ上りませんが、果たして、地方やへき地にお住まいの方は国鉄や郵便局が民営化して、何か便利になりましたか?むしろ不便になったのでは?と問うてみたいです。
仮に国営化されても、ここまで人口を減らしてしまったら、末端路線の廃線はやむを得ないと私も思いますが、経費節減の末に起こったいつぞやのJR北海道の悲惨な事故のようなことは起こりにくくなると思います。
また、先週の東京新聞で、来年の自動車の自賠責保険値上げの元凶が、事故の増加ではなく、財務省が何十年か前に法律を変えて支援事業から6000億円以上を「借りパク」しているからだという報道がありました。
■ 2023年度から自賠責保険値上げ!! その驚きの理由とは!?(ベストカー)
■2022-06-02 堀潤「人口減少時代 鉄道路線から考える「都市の未来像」(堀潤/jamtheworld どなたでも聞けます)
「年間3億」とはいえ、滋賀県は「交通税」を新設して徴税せねばならぬほど逼迫しているのか、それとも、ほかの支出がいい加減で、優先順位が下げられて、結果として県民に転嫁されているのかはよく見極めねばならないと思います。
消費税が法人税の穴埋めに使われて、福祉に限定されていないように、「目的税」とはあくまで名目です。安易に県民の不安を煽り、増税を受け入れなきゃ廃線するよと、増税の理由にするのは不誠実だと思います。
私たちの税金が適切に配分されず、防衛費5兆だの、不毛なオリンピックだの、アベノマスクだの、国葬だのに使われてしまうのを防げなかったように、せめて県レベルで、近江鉄道を支援するにしても、本当に財源は増税以外ないのか、県民やメディアはしっかり監視してほしいと思います。
長くなりました。
さて、2つ提案をしてみましたが、京都新聞でも取っていなければ、ほとんど私たちの耳には入らないニュースです。これからの議論が惰性ではなく、真摯に地域のためを考えたものになることを願います。
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